2020年の東京オリンピックが決定しました。東日本大震災の復興事業と合わせて、これから2019年までは、日本中で土木・建築現場における資材不足や人手不足が起こると予測されます。さらに人口減少が必然的な状況で、県が独自の新規事業を出すことは将来の維持費用を含めて財政と工事品質の両面に課題が生じるため控えるべきだと感じています。この間に急ぐべき課題は、高度成長期以降に整備されたインフラの再整備、つまりトンネルや橋・道路などの維持管理であります。維持を続けていくことが難しいところは、廃棄することを含めて検討する必要があります。当然、伊万里港から佐賀方面へ向かう道路や有明海湾岸道路、佐賀〜唐津道路など、地域ごとに強く要望される事業もあると思いますが、未着工部分の工事は一旦ストップして、2020年の東京オリンピックに政府が総力をかけられるように支援できる体制を整えるべきです。

オリンピック特需が終わった後の土木・建築業界には一転して、引き締めの圧力がかかるでしょう。佐賀県が実施すべきプロジェクト事業は、この時に実現できるように計画を遂行していく必要があります。その為にも県の財政に余裕を持たせていかなければなりません。

これからの時代は公共事業でも民間の開発でも木を切ること、農地を転用することには厳しく判断していく必要があります。一方で商業地・住宅地の再開発には地価を下げることに地権者が同意していただけるならば、積極的に費用を投じて将来につながる事業を進めていく必要があります。


新鳥栖駅の接続道路について

2011年3月に開業した九州新幹線と県内唯一の駅である新鳥栖駅。2014年3月のダイヤ改正で大阪直通の「さくら」が全て停車することに決まりました。この新鳥栖駅の利便性を向上させ九州を旅した皆さんが帰りの駅として利用していただくために、長崎自動車道山浦PAに大型バスが利用できるスマートインターを設けJR新鳥栖駅までの県道を整備しアクセスを向上させることを実現させたいものです。

九州新幹線新鳥栖駅の利用客は、JR九州の目標通りで推移し、関西直通列車の停車を増やすという希望のダイヤ改正が実現しました。一方で、駅前に観光バス用の駐車スペースがあるにもかかわらず、十分に利用されているとはいえません。

新鳥栖駅へのアクセスは現在、高速道路の鳥栖ICまで5km(約10分)と利便性の良い場所に位置していますが、アクセス道路である県道31号線・国道34号線は慢性的に渋滞しており、所要時間を担保することは難しいと感じています。

今後、関西方面からの修学旅行や観光客を誘致するには、博多駅と比較したときに交通渋滞に悩まされることなく行程を組むことができるということを、強くアピールしていく必要があると感じています。

そのためには、山浦PAに大型バスが利用できるスマートインターを設け、そこから直接新鳥栖駅へアクセスできる県道を整備し、高速道路から駅まで5分で確実に到着するようにインフラを整備する必要があるのです。

この道路を実現することで、旅行会社にはツアーの帰りに利用しやすい駅として売り込み、駅のお土産売り場などが、さらに賑わうように取り組む必要があります。山浦PAを実現することで、博多駅でも久留米駅でも実現できない、高速鉄道と高速道路の連携ができるようになると感じています。


女山トンネルについて

限られた予算の中で公共事業を行うには、地域をどのように発展させるかのデザインが必要になります。その上で、事業に優先順位を設ける必要があります。

港湾の整備においては、伊万里港を国際貨物の港として整備する一方、唐津港は一部の旅客のほかは漁業が中心であるべきだと感じています。

それに合わせて唐津伊万里道路の整備を急ぐ一方、県道25号女山峠のトンネル事業は、一時凍結することを考えるべきです。事業を進めることで需要を生み出すのではなく、需要があるから事業を行わなければなりません。その意味では、現在の予算規模で工事を行うのは、適当でないと感じています。

女山トンネルはまもなく工事着工という段階にまで話が進み、議論の余地がないのかもしれません。しかし、判断を行う機会に恵まれるのであれば、現在女山峠を通行するトラックの実態調査を行う必要があると考えています。

これは通行量の調査ではありません。どこからどこへ移動しているトラックなのかということです。実態調査を行った結果、伊万里〜多久・小城を結ぶトラックが多数を占めているのであれば、これまでの流れを受けて女山トンネルを着工する必要があります。一方で、通行車両が多久インターチェンジへ向かうものであったり、福岡県大川市方面へ向かう車であるのなら、別の対応策を準備する必要があります。

伊万里から福岡方面へは西九州道路の整備が進んでいます。現在北波多まで伸びているこのルートが伊万里まで延伸したときに現在の女山峠の通行量が、同じ程度見込めるのでしょうか。西九州道路が佐世保・佐々から平戸口方面へと延伸されたとき、これに伴う影響はどうなのでしょうか。限られた予算の中で、有料道路を利用する車とそうでない車が別々のルートを走るために道路を整備するということは、予算が限られてくる時代に行うべきではありません。

また、女山峠を通行するトラックが、大川市方面へ向かうのであれば、こちらのトンネルを整備するよりも鹿路峠を越える国道498号線から武雄市北方町大崎へ抜けて、国道34号線江北町へのルート整備を実現することが重要だと考えています。特に国道34号線の江北町から武雄北方インター間は、片側1車線のため慢性的な渋滞が続いています。これは長崎自動車道高速道路が開通して25年が経つ今でも継続しているにもかかわらず、いまだに対策が行われていません。2013年春に開業した県道江北〜芦刈線や有明海沿岸道路とリンクしていくためにも、女山トンネルの実現より国道34号線・498号線の拡幅工事に取り組むべきだと考えています。さらに、国道34号線は現在JR佐世保線と並行して走っており、10年後には佐世保線が長崎新幹線の一部区間となるため、列車本数が倍増することが計画されています。国道だから県の管轄ではないという考えでは、県民生活により大きな障害を生み出すことになります。

大きな視点に立った需要見込みを立て、限られた予算の中で暮らしやすい環境をつくることが重要ではないかと感じています。


交通の取り締まりについて

現代社会を自動車で走っていると、社会を象徴するように規制の標識が溢れています。本来の規制・取り締まりのあり方は、何か起きたときのためや起こらないために行うではなく、社会が円滑に回るために行うことが必要だと感じています。制限速度を40km、50kmといたずらに規制するのではなく、本当に減速しないと危険な箇所は30km以下で速度規制を行った上で取り締まりを強化する一方、それ以外の箇所では法定速度60km/hでの制限のみにとどめるべきです。道路に立つ標識を減らすことによる景観美化ができるのです。

交通違反の取り締まりは、小さなスピード違反よりも一旦停止や信号無視など、交差点事故の防止に重点を移すべきだと感じています。当然、自動車ばかりでなく自転車や歩行者も対象になります。

騒音や排ガスに関する規制や取り締まりは、環境が重視されるこれからの社会では、重要な意味を持つと感じています。