「佐賀県はアピール下手だ」と言われてきました。しかし、知事が現在の古川さんになって佐賀の良さをアピールすることは以前に比べて格段に佐賀の良さをアピールできていると感じます。その成果は、学生世代を中心に佐賀を好きだと主張する人が増えたと感じるところにあります。ただ、時代に合う魅力を追いかけるのではなく、時代を超える魅力を大切にしていかなければなりません。観光に力を入れたつもりでも、行き過ぎた開発は自然の魅力を失うことにもなりかねません。

20年前、新幹線の中で読んだ雑誌に「うちの工場は富士山が見える素晴らしい環境に立地しています」という事業者の視点と、その工場を含めて眺める人々の視線「工場がなければ美しい富士山の景色を楽しめるのですが」という記事は、象徴的事例だと思います。

佐賀県の景勝地、虹ノ松原。現在も多くの観光客が足を伸ばす鏡山ですが、昭和50年代の景色と平成の今の景色は、訪れる人たちにそれぞれどう魅了するでしょうか? 昭和の鏡山を知る人は、青い海、緑の松原、その手前の水田に広がる色とりどりの景色、これらをまとめて楽しみ、季節の異なる時期にまた遊びに来たいと思ったでしょう。平成の鏡山からの眺めは、青い海と緑の松原は変わらないものの、その手前に広がる景色は統一感のない住宅やショッピングセンター、そしてビニルハウスです。経済的な発展の一方で、貴重な観光資源を消失してしまったのではないでしょうか。

2013年5月7日、日本の棚田100選にも選ばれている玄海町の「浜野浦の棚田」に沈む初夏の夕日を見ようと、現地へ足を運びました。現地で見る景色は報道映像で見るよりもより時の流れ・音・風・草花などを感じることができ、感動的だった一方で、景色に写り込む高圧電線がその景色を台なしにしているように感じてしまいました。佐賀をPRするフォトスポットで有り、観光の名称として人々を和ませるこの場所から高圧電線と鉄塔と取り除くことは、夢である「世界の人々がその美しさを求めて足を運ぶ県にする」ことを実現するためにも必要な政策だと感じます。現地の左上にある鉄塔は、玄海原発における非常事態に備えるためにも残しておく必要があると考えますが、この電線はルートを変更して、これまで以上に多くの人たちに愛される場所を目指して育てていく必要があります。

こうした課題を一つひとつ解決していくためにも、企業と現地の農政部門・環境部門そして経済・産業部門が一体となって地域の皆さんの活動を支援していくことが重要だと考えています。

20年に一度の式年遷宮を終えて観光客で賑わう伊勢の国を旅すると、自然豊かな木々の色合いや葉の光を感じながら「この国にはその豊かな自然だけで人々を引きつける力がある」ということに気づかされます。そこが日本の神々が宿る場所であるからなのかもしれませんが、出雲や日向では感じられない人々を寄せ付ける魅力を感じるのです。肥前の国には、こうした神々が集まる神話などありませんが、一人ひとりが地域の自然・環境を大切にする念いを持つことで、その魅力が輝き出すのではないでしょうか。

繰り返し足を運んでくれる人を増やしたり、口コミで人が集まるようになるためには、こちらが「見せたいところ」をアピールすることではなく、「見せたくないところ」をなくしていくことから始めなければなりません。 観光資源として見せたくないもの、それが車窓から見えるゴミです。駅で降りて散策するときに落ちているたばこの灰や空き缶、ペットボトルです。 これを無くしていくためには、みんなの道徳心を復興させることが重要でもあります。さらに、それと並行して集めたゴミを処分できる仕組みをつくらなければなりません。集められたゴミを確実に処分できる体制をつくると共に、五行のサイクル(木→火→土→金→水→木)にのって循環できる物作りやそれを使う機運づくりを行い、小泉八雲が賞賛した美しい国の再生を行うことで世界中の人々を魅了できる土地にすることを夢に掲げています。

地元にいると見失う資源が沢山あります。そのことに気づき育てていくことがとても重要です。気づきのためには、人を育てることが大切です。時代を超える魅力を伝え、世界中の人々がその美しさを求めて足を運ぶ県にする。  実現したい夢の章です。