無名の新人が任期途中の知事選に立候補するという冒険は禁物です。

 任期満了によらない知事選挙、実際にはどのようなケースがあるかを考えてみました。
1.衆議院解散により現職知事が総選挙に出馬する場合(今回のケース)
2.通常選挙に現職知事が出馬する場合
3.別の地方選挙に出馬する場合(大阪府知事の橋本さんのようなケース)
4.現職知事が病気などを理由に辞職する
5.現職知事が議会の追求によって辞職に追い込まれる
6.現職知事が住民投票によって辞職に追い込まれる
7.現職知事の死去による

 それぞれのケースが同じに、全く勝機を見いだせないというわけではありません。厳しさには違いがあると考えられます。

 このうち、知事になることが出来る可能性を秘めているのは、住民投票で知事辞任(リコール)の場合だと考えられます。リコールの署名期間(最大2ヶ月)、成立から住民投票(60日以内)、知事の失職、そして知事選挙(50日以内)と選挙へ向けた準備を進めるだけの十分な準備期間が確保できるからです。リコールの段階で推進の旗振り役を務めれば、知名度を上げることもできます。無名であっても知事を目指すということは、すでに現職に対する問題意識を持っているわけですから、仮にリコールや住民投票で現職知事の辞職が実現できなくても、任期満了で行われる選挙に対し、マイナスになることは考える必要はないでしょう。

 しかし、その他のケースは、まさに突然やってきます。現職知事が病気で辞めること、これは通常考えられません。今の政治家の皆さんは、その職に執着があります。そして、今回知事選を経験して分かるように、選挙ではお金を使います。職務は副知事に依頼しながら、病床で職責を全うしようとすることは自然な判断と言えます。このケースでは、無名の新人が挑戦するための情報を得ることが出来ません。任期満了での選挙に備えることが現実的なのです。
 その病気療養中の知事が死亡しても、事前情報が入らない新人候補には、選挙まで最大50日という日程では、今回私が経験したように準備不足になると考えられます。病死・事故死関係なく無名であるハンディを打ち消すには厳しい期間です。知名度を上げることはもちろんですが、選挙日時をコントロールできませんから、選挙スタッフを採用するだけでも苦心することになります。マスコミへの対応とスタッフの準備、そして事務所の立上という作業を短時間で行えるだけの、強みがあれば話は別ですが。

 議会の追求によって知事を辞職した場合はこう予想します。知事が辞職するまではメディアの注目は議会に集まります。知事は辞職をほのめかすことなどあり得ませんから、それを推測することは出来ません。立候補予定者に、お金の余裕があれば事務所などの準備も可能ですが、無名の新人候補にその余裕はありません。知事の死去による選挙と同じように、50日以内での選挙準備という厳しいものになるでしょう。

 現職知事が、ほかの選挙区に出馬するケース。そして国政の通常選挙に出馬するケースです。それぞれの選挙は日程こそ決まっているものの、事前に動きを予測することはできません。50日以内での選挙準備が必要です。しかも、現職知事が目指す選挙が参議院選挙である場合、選挙運動期間が同じになる同日選挙が予想されます。国政選挙と同じ時期にスタッフや選挙用品を準備することは非常に難しいことになるでしょう。ウグイス嬢捜しはもちろん、選挙カーの準備、そして運転手の手配も容易ではありません。立候補表明を行ってから、準備が進まない苦労(同じタイミングで国政がある以上、時間がたてば経つほど厳しくなると予測される)を味わうことになると考えられます。

 そして、今回私が経験した現職知事が総選挙に出馬する場合です。前回の総選挙でも、東京都知事の石原さんが辞職し、ダブル選挙になりましたが、今回の県知事選挙は総選挙が終わってからの選挙日程でした。いずれの場合も日程が決まらないことは,選挙の準備が出来ないことが最大の課題です。ウグイス嬢や運転手、レンタカーの手配、ポスター貼りの依頼など、お金を必要とする全てのことが日程が決まらなければ始まりません。もちろん、記者会見を行い知名度を上げる活動は出来ます。しかし、選挙日程により大きな障害が発生します。
 同日選挙の場合、衆議院選挙の期間(12日間)は知事選挙の期間に含まれますので問題はありません。しかし、知事選の日程が一週間でも遅い場合、知事選挙の期間でない衆議院選挙の期間が生じ、その間は知事選を目指す立場であっても後援会活動に制限がかかるのです。街頭で演説を行うことも出来ません。

063 今回の場合、知事が辞職表明されたのが11月25日、私が立候補表明をしたのが11月27日、衆議院選挙の公示が12月2日、投票が12月14日、そして県知事選挙の告示が12月25日でした。このうち、12月2日から14日の13日間の活動が制限されるのです。 メディアに注目してもらえる期間のほとんどが、街頭で活動できない期間になってしまったのです。表だって活動できるのは立候補表明から実質15日間しかなかったのです。 当初計画していた全県に新聞広告を打つことも出来ませんでした。立候補の説明会は12月8日でしたので、届出資料の準備も出来ません。
 結局その間、私はドクター中松と香港に行ったり、選挙応援に勉強に行ったりしていましたが。

 同日選でなかったことで、スタッフを揃えることは出来ました。選挙活動をメディアに取り上げてもらうことも出来ました。しかし、準備期間に名前を売ること,政策を売ることのほとんどが出来なかったというのが今回の教訓です。

 一方、立候補表明が遅れたように見える山口新知事ですが、このような公職選挙法の制限により、実は出遅れではなかったとも考えることが出来るのです。


 このように、任期満了ではない選挙に無名の新人候補が立候補しても、メディアに取り上げてもらうことと、選挙準備を並行して行うことには、任期満了の選挙とは比べものにならない大きな壁が生じるのです。

 もし、これから知事を目指す方が、突然選挙になって欲が生まれた時には、心して対応なさることをお薦めします。


 なお、私の記事は出馬する選挙で,知事になることを目指すことが前提となります。本末転倒でありますが、売名行為や主張をするだけの立候補には、当てはまらないことがあります。