今回知事選挙を経験してみて、選挙を行う上で最低必要な組織と人員がどのくらいか分かったこと、これは大きな収穫だったのではないかと感じます。

 選挙をやる上で必要な人数。これは候補者1人でも可能です。よく「会計責任者が必要だろう」とか、「選対本部長は」と聞かれました。確かに、後援会をつくるためには会計責任者と会計責任者の職務代行者が必要とされています。しかし、選挙では候補者自身が会計責任者など全ての役職を兼ねることが出来ます。立候補届出の代行する者、ポスター掲示の責任者なども全て候補者本人が行うことが出来ます。

 一方で、今回それを経験した私は、このやり方では知事選を戦うことは無理であることを学びました。では、お薦めしないまでも候補者本人で対応できるのはどこまでか?ということを考えてみます。意外に感じられるかもしれませんが、会計責任者は必ずしも必要ではありません。これは、お金を沢山使うために必要なポストですから、いなければ選挙が回らないというものではありません。ただ、当選した場合に、事務処理を後回しにすることは出来ませんので、首長を目指す場合には、あまりお薦めできません。 逆に必ず必要なのはポスターの掲示責任者です。自治体の規模によって、何人でポスター貼りを行うかは変わってくるでしょう。しかし、地図を確認しメンバーに手順を説明し、完了のチェックを行う、そして問題が発生した場合に対応する、という事を考えるとどんなに小さな自治体の選挙でも、専属で1名お願いするべき仕事です。今はポスター貼りの作業は簡単に、しかも美しく貼ることができます。おそらく小城市の100箇所なら私が1日で貼ることも可能です。だからこそ専属で1名のスタッフが必要なのです。
 それから街宣活動の責任者です。地域の事情に詳しい人なら街宣車の運転手が兼ねることも可能です。候補者自らが選挙戦全体の街宣行動を計画し、翌日回る地域を考え、さらにどんな道順で回るかを考えると、候補者が本来の選挙活動に集中できません。大まかな時間を伝えることで、後は責任者の案内で街宣が出来ること、これはとても重要な役割です。その意味では、随行車を設ける余裕があることは理想と言えるでしょう。
 そしてもう1人が事務所スタッフです。訪問者への対応と配布するビラへ証紙貼り、そしてメディアや様々な団体から送られるアンケートに候補者の代わりに対応することが求められます。事務所が留守では、せっかく足を運んで下さった方を門前払いにしてしまうことになります。

 どんな選挙に出る場合にも、以上の3人は選挙期間中、常に控えてもらう必要があるのです。

  さて今回の佐賀県知事。ポスターは2406箇所に貼る必要がありました。鳥栖三養基地区、神埼地区、小城地区、伊万里市、玄海町は告示日までに、全てのポスターを貼る担当をお願いできたもの、佐賀市、唐津市をはじめ県内西部を中心に遅れが生じ、しかも、全体の責任者を決めていなかったために、すでに終わったつもりでいた大町町や白石町、唐津市で何度も繰り返して足を運ぶ必要に迫られるなど、当初予定していた以上に人手をかけることが出来たのに、17日間の選挙戦が終わるまでポスター貼りにかかるという結果になりました。
 街宣車の行動でも反省点は数え切れないほどあります。2014年末の衆議院選挙では、候補者自らがハンドルを握って街宣されていた方もいらっしゃるそうです。それほど、急な選挙は人手不足に悩まされます。運転手なら、ただ運転できれば良いというものではありません。運転がうまく、愛想が良く、さらに地元の地理に詳しければいうことはありません。しかし、それが出来なくても、運転がうまいことは候補者とウグイス嬢にとってどれだけ負担が少なくなるか、とても大きなポイントを占めます。今回の選挙では、6名の方に運転手を務めていただきました。その中の1人に神戸市から来てくれた友人がいます。彼は2種免許を持っているためにとても運転がうまく、丁寧です。乗っていて安心感が違います。長距離移動と長丁場の知事選挙では、地元にこだわるよりもうまい運転手を探すことも重要になります。そして、地元の地理に詳しくない方が運転する場合に活躍するのが街宣活動の責任者です。街宣ルートを作成し誘導できることが強みになるのです。
 今回の選挙戦。山間部を走りながら道に迷ったことが何度あることか。その時間のロスは、致命的なものです。山間地など過疎の地域へも,足を運ぶことは大切なことだと考えています。だからこそ、地域の事情に精通した方の協力が不可欠になります。

 建材店を営み、地理感に詳しいと思っていた私の選挙運動を、最も阻害したのがメディアへの対応や団体からのアンケート依頼です。昼休みに地図を見る時間を与えてもらえません。事務所へ戻るとアンケートの対応に追われます。メディアからのアンケートは回答する内容がほぼ同じなのに、記入するフォームが違うのです。コピーペーストで終わる内容ですが、手書きで対応する必要があるのです。さらに取材があります。県知事選のレベルではメディアや団体対応には専属で対応する事務員が必要だと強く感じました。
002 このほか、集会を行う場合には、その規模に合わせてスタッフは必要になります。活動の規模を大きくすればするほど、お金と人手は必要になります。一方でドクター中松の選挙運動を経験して、ウグイス嬢はいなくてもしっかりした運転手とスタッフがいれば選挙は出来ることも学びました。

 しかし、どんなに小さな選挙運動を心掛けても、候補者本人が街宣活動に集中できる環境をつくる、その為にもアンケートを処理し、メディアへの電話対応の出来る事務員を置くことは必修要件です。