この週末に投票日を迎える東京都知事選挙。過去を振り返ることで見える未来があるのでは、との思いから5年半前になる知事選の政見放送原稿を開いてみました。当時、直前に行われた総選挙で公共倫理に反する等の理由で、政見放送が出来なかった人がいたとの情報から、収録当日に二つ目の原稿を準備して、NHKと民放2局を使い分ける方法をとりました。

 ここでは、一つ目の原稿を紹介します。5分30秒という時間、わずか2枚の原稿です。1度収録して取り直すことも出来ますが、その場合は、上書き保存。2回目のやり直しは出来ません。

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この度、佐賀県知事選挙に立候補しました、いさがい良隆です。

「食育改革」このフレーズにピンと来ない方も多いかと存じます。
人間をつくるのは「ハードは食べ物」「ソフトは教育」です。しかし今、食が乱れています。食は文化といいます。食べ物によってその土地の人々の思考がつくられ、文化が生まれるのです。

 さて2013年、私が栽培する田んぼでは、ウンカによる大きな被害を受けました。当時私は、減農薬・減肥料の特別栽培を、種を直播きする方法で取り組んでおり、防除の時期が遅れたことが要因だと考えていました。報道でも「中国やベトナムで使用される農薬が高度化し、それに抵抗するウンカが生まれて飛来することが要因」とされ、そのことを疑いませんでした。

 種子の消毒なしで栽培することは難しいのか?
 20年以上農業を行いながら、初めて食を考えるようになりました。
 硝酸体窒素、アニオン、カチオン。聞き慣れない言葉が並びます。

 学んでいると、戦後日本で普及した化学肥料が、日本の土地を変え、農薬が必要な農業へと変えてしまっているのではないか、と感じるようになりました。

化学肥料の原料は何か?

肥料の課題(硫黄の連鎖)現代の農学で教えられる肥料の最大成分である窒素。これが日本の高い性能の自動車を薄い鉄板で造るときの副産物ということを知りました。当時、処分に困った自動車や鉄鋼の業界と食糧増産のための肥料が必要だった農業の課題が一致したのです。

 ところが、この化学肥料窒素は何年も繰り返して使っているうちに、土壌に弊害が起こるようになりました。土地が痩せること、作物が病気や害虫に対し弱くなってしまうことです。作物の根が窒素の影響で本来の機能を果たせなくなっているのです。ウンカの被害は海外にあるのではなく、自らの栽培方法にあると感じました。
 この時、私たちが知りうる情報には大きな誤りが含まれることを学びました。もし、誤った情報が「食」と「教育」を間違えて導いていたなら。

今、日本人が「コメ」を食べなくなりました。お米の価格は安いのになぜ、食べなくなったのでしょう?
 農家は所得を増やすために、野菜などの生産に力を入れています。そこでは稲作以上に大量の肥料が使われています。堆肥だから大丈夫。必ずしもそうではありません。日本の畜産業の多くは家畜を守るために「抗生物質」を使っています。抗生物質を使った家畜の糞や農薬を多量に使ったわらで、良質の堆肥がつくれるのでしょうか。

 化学物質により汚染された農作物を食べることにより、私たちの脳は正しい発達、思考を阻害されていませんか?
 成長ホルモンを多用した食料が少子化を加速させていませんか?

 一方、お米を食べなくなったことにより耕作放棄地が増え、私たちは、お金への欲から農地を「住宅」「道路」さらには「メガソーラー」に変えています。このままでは日本の農業を再生させることも、国民を守ることも出来なくなってしまいます。

 先の大戦、昭和の天皇陛下が終戦を決断なさった理由を考えた時、戦いを継続するための原油がないこと、国民が秋に食べる食べ物がないこと、この二つと言っても過言ではありません。

 原子力発電所を止めてしまった日本では今、生活に必要なエネルギーの全てを海外に依存しなければなりません。時間をかけて国際交渉を行う時に必要な食料も海外依存です。自前のエネルギーとして可能性の残る原子力と、いざというときの弁当を作る農地、これ以上破壊してはなりません。

 追い込まれた日本が同じ過ちを繰り返さないために、私たち庶民がそのことに気づき、政治を変えていかなければならないのです。

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 政見放送は、各放送局ごとに期間中3回放送されます。22人もの候補者がいる今回の都知事選挙。視聴する有権者は・・・。