九州新幹線長崎ルートについて

 ひとつの案として、「博多〜糸島〜唐津〜武雄温泉」を結ぶルートを提唱します。九州新幹線長崎ルートの法的根拠は「全国新幹線整備法(昭和45年法律第71号)」第7条第1項を基に決定された事項

昭和48年11月13日
国が九州新幹線(区間:福岡市〜長崎市)ルートの整備計画を決定
1 主な経過地 佐賀市付近
2 その他 九州新幹線(福岡・鹿児島)と筑紫平野で分岐するもの

にあると考えられ、新鳥栖駅分岐と佐賀市を通らないルートではありません。しかし、同法に 記された北陸新幹線の主な経由地には「小浜市付近」と記されたにもかかわらず、小浜市を 通らない敦賀〜米原ルートも検討されました。その事例があることをみれば必ずしも法的根拠に拘束されるものではないと考えることができます。
 最初の計画から45年以上が過ぎ、当初計画の早岐経由が見直されただけで約30年間、 地域の発展や衰退、災害の発生状況などに目を向けることなく、一つのルートでアセスメントを行うことが日本にとって幸せなことかを考える必要があります。

 長崎本線肥前山口〜鳥栖は佐賀県民の生活基盤であります。それぞれの自治体が求めていない新幹線が通ることで、在来線がJR九州から経営分離されるなど、私たち地域住民が 不自由を強いられることには賛同できません。一方で、唐津市は佐賀市と同様、福岡市を 生活の一部とする地域であるにもかかわらず40年もの間、鉄道の高速化の恩恵を受けることがありませんでした。佐賀県南部地域は佐賀空港の開港により、東京へのアクセスも便利になりましたが、唐津市をはじめとする県北西部は、こうした恩恵も受けることができずにいます。筑肥線山本〜伊万里の経営問題も表面化した今、同地域の将来を含めた佐賀県の発展を考えれば、議論すべきルートだと確信しています。

 日本はトンネル工事の名人です。現在首都圏で利用されている道路(中央環状山手トンネルなど)や鉄道(都営地下鉄大江戸線など)、青函トンネルや中央リニア新幹線の計画をみれば、福岡の市街地に掘るトンネルは難しくないことでしょう。
 提案するルートは博多駅11〜13番線を起点に北向きに進路をとり福岡市中心部を大深度地下トンネルで通過します。途中駅には、
仮称・百道(福岡ドーム付近・8km、ホーム2面)、
仮称・糸島(波多江駅付近・23km、ホーム2面)、
仮称・新唐津(浜崎駅付近・47km、ホーム4面)、
仮称・新伊万里(肥前長野駅・70km、ホーム2面)
を設け、武雄温泉(85km)に東から入線します。

20201111 長崎新幹線案全体図 全長77kmとされる新鳥栖回りのルートに比べ、数キロの遠回りになりますが、これまで高速鉄道の恩恵を受けることの出来なかった糸島市(快速35分)や唐津市(70分)の皆さんにとって、大幅な時間短縮が期待できます。

唐津経由の九州新幹線西九州ルート、その設置駅とルートのメリット

仮称・百道駅
 一編成で約1000人を運ぶことが出来る鉄道は、福岡ドーム周辺で開催されるイベントによる混雑緩和も実現できるでしょう。博多〜糸島で臨時列車を5分ごとに運行すれば、1時間に 1万人以上を運ぶことが出来ます。よかトピア通りや西新・脇山口交差点をはじめこの地域の 道路混雑緩和は地域住環境の改善のみならず、高度医療機関の利便性向上にもつながる でしょう。

仮称・糸島駅
 九州大学伊都キャンパスの玄関口を兼ねる駅になります。九大学研都市駅の整備が進められていますが、教育環境も充実した人口10万人を超える糸島市の発展と地域の利便性を考えると筑前前原との中間にあたる波多江駅付近で筑肥線との接続を図ることが有効だと感じます。

仮称・新唐津駅
 唐津市内の利便性を考えれば、東唐津駅に新幹線を通すことが理想です。しかし、ルートが遠回りになることや、虹ノ松原を通すことで環境問題の発生が予想されます。市内中心部へのアクセスに多少の不便が生じても、半田または宇木から相知町伊岐佐へ抜けるルートを検討 できる浜崎駅付近で筑肥線との接続を図り、福岡市内や福岡空港への時間短縮を期待します。

仮称・新伊万里駅
 多久市などからの道路アクセスを考えれば武雄市若木町も候補になります。しかし新幹線の駅はまちの顔ですので伊万里市内に設けなければなりません。15年後の鉄道を考えたときに、筑肥線・山本〜伊万里の廃止は避けられないと感じます。そのときに、市内大川町や松浦町が鉄道のない町になるか、鉄道の玄関口となるかでは町の景色も大きく変わります。「鉄道のある風景、そこでは暮らしの時計代わり」でもあるのです。
 伊万里市内から福岡市内の高校、大学へ通学できることも魅力になります。

 唐津、伊万里の両地区は、佐賀空港の恩恵を受けにくい地域です。ここが新幹線で結ばれることによって、佐賀県内10市の市役所から佐賀、福岡、長崎いずれかの空港まで1時間以内、東京霞ヶ関まで4時間(飛行機乗り継ぎ)が実現できるのです。
 (直通新幹線で6時間)
 昭和58年3月、筑肥線は福岡市営地下鉄へ相互乗入れに経路変更され、博多駅ホームは当時の1,2番線から地下ホームへ移動しました。これにより新幹線への乗り換え時間も、従来より5分ほど長い時間を要しています。新幹線で同じホームに入線すれば、直通列車でなくとも、乗り換え時間は5分以内に短縮でき、高齢者の方や大きな荷物を持った方の負担も軽減できます。広島、大阪そして九州各地への移動も便利になります。


 次に、法律に縛られた新鳥栖〜佐賀〜武雄温泉フル規格(またはミニ)新幹線で建設する場合のデメリットについて、駅ごとの状況を踏まえて考えてみます。

新鳥栖駅
 新幹線のホームは長崎新幹線と分岐することを想定し4面のホームで開業しています。 しかしフル規格(あるいはミニ新幹線)が前提にされていないため、新鳥栖駅を通過した列車が長崎本線へ進む場合、大幅な減速(徐行運転)が必要になるはずです。
 新鳥栖駅のような設計で直交する線路を列車が進むケースに、近畿日本鉄道新ノ口連絡線(大和八木駅)があります。京都方面から伊勢市方面へ向かう特急列車は八木駅手前で徐行し急カーブを曲がり八木駅のホームに入線します。
 今回は新幹線です。ネット検索してみると『新幹線の本線区間における最小曲線半径は東海道新幹線が2,500m、山陽新幹線以降に建設された各線は4,000mとなっています。ただし、用地や地形の関係から急曲線とならざるを得ない区間では、その区間の列車速度により曲線半径400mまで許容されています。さらに推定脱線係数比が一定以上か、脱線防止ガードを設置することで200m以上の曲線半径をとることもできます。
東海道新幹線の東京-新横浜間や東北新幹線の東京-大宮間のような都心部区間は、曲線半径が400mから2000m程度の急曲線が含まれています。そのためこの区間ではどうしても比較的低速で通過せざるを得ません。例えば東京−大宮間では最高速度が110km/hと在来線なみの速度しか出せません。』とありました。
 計画中の長崎新幹線、最速列車は新鳥栖駅に停車しないはずです。通過列車が時速30kmまで減速するのでは、新幹線開業効果として公表された時間を守ることは難しくなるでしょう。 あるいは、それを厳守するために「佐賀駅通過」というダイヤが設定されるかもしれません。 あくまでも、最速列車の時間を守るためですから1往復だけかもしれませんが、工事費用を 負担させられる佐賀県が認めるべきことではありません。
 新幹線を減速させずに新鳥栖駅を通過する場合、みやき町役場付近を通過し吉野ヶ里公園付近で長崎本線に接するルートが適当だと感じますが、用地買収費用など新たな負担が生じることになるでしょう。
 国の提案がどのような形になるか分かりませんが、新鳥栖駅の構造上の問題は長崎新幹線をフル規格で建設する際の大きな課題になることでしょう。

佐賀駅
 この課題は、ただひと言「駅が10年に1回以上浸水すること」です。
 昭和51年の高架開業以来、解決できない課題です。予想可能な災害発生場所を主要駅にすること、これは新幹線の駅としてふさわしくありません。

肥前山口駅
 第三セクターとなる長崎本線区間との分岐駅となります。駅が抱える問題を現時点では想像できません。ミニ新幹線で整備された場合、着工当初に三者合意で約束された肥前鹿島までの直通運転や博多からの特急も実現できないことになるでしょう。
 また、肥前山口駅へ向かう小城市牛津町、武雄市高橋地区は平成2年、令和元年の水害に象徴されるような水害の危険地帯です。駅が孤立しないかを考える必要もあるでしょう。駅周辺地域で地盤沈下が発生していたことは鉄道を高架にする際、心配するところです。

久保田駅
 新幹線は止まりませんが、唐津線への接続駅です。予想される佐賀(または新鳥栖)〜武雄温泉駅の経営分離がなされた場合に、唐津線の列車がどうなるのかも考える必要があります。
JR東日本花輪線のように直通運転がなされるのか、それとも唐津線も含めて経営分離される のではないか。開業は15年も先のことですから、そんなことも考える必要があるでしょう。
 バルーンフェスタの開催に合わせて開設された「バルーンさが駅」。JRの支援なしで開設、運営することは困難だと思われます。

 長崎本線・佐世保線が経営分離されたとき、住民の足である久保田〜武雄温泉に水害が生じた場合、復旧にかかる時間は、現在よりもはるかに長くなることも予想されます。

 高速鉄道による未来像

 唐津経由の新幹線西九州ルート。佐賀県のメリットに、県内の工事区間距離が約40kmと新鳥栖〜武雄温泉の約51kmに比べて短く出来ることがあります。用地買収にかかる費用は予測できませんが、新鳥栖駅の問題に関連する用地買収の費用や有明海に近い軟弱地盤で生じる土木技術に対する不安要素を考える必要のある佐世保線〜長崎本線ルートに比べ、必ずしも大きいとはいえないでしょう。住民の足である長崎本線や佐世保線が並行在来線として経営分離される可能性も極めて少なくなります。
 佐賀県、そして九州の将来を考えるチャンスにできるはずです。博多駅を分岐駅とすることで、これまでの計画で想定されなかった「東京駅(首都圏)乗入れ」の可能性が生まれます。 現在、約2時間に1本の割合で大阪〜鹿児島を運行される最速タイプの「みずほ号」。長崎 編成8両と博多駅で分岐することで、東京〜新大阪〜博多〜鹿児島中央・長崎も考えることが出来ます。長崎新幹線の開業が予想される2030年以降は、中央リニア新幹線開業により 東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれ、16両に連結した九州新幹線が東京駅乗り入れを 実現できると考えるのです。高速鉄道は揺れが少ないことも特徴です。救急医療搬送にも道を開くことが出来るでしょう。佐賀では難しい施術を、患者さんの身体に負担をかけずに東京の 医療機関へ運んで処置をすることにも道が開けるでしょう。
 古来より、町づくりに利用されてきた風水。四神相応の思想に基づいて佐賀県を見たときに、西側に道路(今回は新幹線)をつくることが、いかに重要であるか気づくことができます。佐賀は北に背振山地(玄武)、東に筑後川(青龍)、南に有明海(朱雀)があります。西に新幹線(白虎)を通すことで大きな未来を切り開く可能性が生まれるのです。
 提案するルートは佐賀県や長崎県に限らず、熊本、鹿児島両県にとっても新しいチャンスを生み出します。前述した東京直通の新幹線を実現するだけでなく、地域の一体感を感じることが出来る鹿児島中央〜長崎の直通列車も視野に入れることが出来ます。

 新幹線西九州ルートは佐賀県の将来のためにも、受け身にならない議論が必要なのです。


ダイヤを現在の新幹線の表示を基にシミュレーションしてみると

長崎発(東京発) 鹿児島方面行き
20200919新幹線ダイヤ_01
20200919新幹線ダイヤ_02
20200919新幹線ダイヤ_03






















鹿児島発 長崎行き(東京方面行き)
20200919新幹線ダイヤ_04
20200919新幹線ダイヤ_05
20200919新幹線ダイヤ_06






















 新鳥栖〜武雄温泉の運行にこだわるのであれば、ミニ新幹線を選択することが、佐賀県にとってより有益になると考えています。